「物理I」の「円運動」の教育内容を考え直す
解決しようとする課題:
(1)円運動するおもりの座標位置が、数式で表現できていない。
(2)円運動の速度 rω[m・rad/s]の方向ベクトル/回転方向の時間的変化が、数式で表現できていない。
(3)円運動の加速度 rω^2[m・rad^2/s]のベクトル方向の時間的変化が、数式で表現できていない。
従来の教育過程上の障害:
(1)数Iでベクトルを習うが、物理Iの教育開始時期に間に合うか微妙。
(3)国内では、海外の教育で見られる「単位ベクトル」の概念や記述が見当たらない。
--(始め)---
単位ベクトル x^, y^ を(x, y)座標上に、次のように定義する。
...(1)
角速度ω[rad/s], 時刻 t [s], 回転半径r[m]と置くと、回転するおもりの位置 r(t)^は、式(2)で書ける。
...(2)
おもりの速度v(t)^は、式(2)を時刻 t で微分して、
...(3)
おもりの加速度a(t)^は、式(3)を時刻t で微分して、
…(4)
式(4)を得る。
以上のようにして、物理Iで表現できなかった円運動の位置、速度、加速度について、それらの時間的に変化する方向が、数式で表現できるようになる。
□
残された課題:
(1)円運動をさせる実験用の仕掛けの作り方がわからない。円錐振り子のモデルではおもりに重力が働くので、円運動のモデルとはかなり違う。
(2)数式から求まる予想する数値と、実験値の比較による理論の立証がされていない。
実験による立証方法(案):
(1)ISS(国際宇宙ステーション)内で、(微小重力環境の)船内の壁に長めの棒を固定、棒の先に電気モータを固定。電気モータの回転軸に糸でつながるおもり(パチンコ玉等)をつける。
モータに通電して回転させ、高速度デジカメで運動状態を連続撮影。
(2) 自由落下で重力を等価原理に従い消す方法
地球の地上で、重めのモータ台にモータを固定。
円運動用モータ台ごと、自由落下させ、自由落下中に、運動状態を高速度撮影。
(3)円錐振り子の仕掛けの観察で代用。
重力の影響を受けない円運動はできないこと、従来の(物理Iの)円運動理論の誤りを立証する。
(4)おもりの重力を床上の抗力でキャンセルし、擬似的な円運動で実験。
この方法は、おもりを糸で張るをと、糸がねじれて、うまくいかない、かもしれない。
(5)重力を考慮したおもりの円運動モデルへの改善
・手でおもりのついた糸を鉛直方向に回転させるモデル
・手でおもりのついた糸を水平方向に回転させるモデル
・手でおもりのついた糸を任意角度方向に回転させるモデル
演習問題を解くこと、公式を覚えて試験の点数を上げることが物理学の目的であるかのような考え方が現在まで支配的に根強いので、物理学あるいは学問/研究/開発への考え方を見直す必要あると感じる。
昔の物理学のほうが健全な学問の姿に思える。
付録: Tex文法による上記数式のテキスト
\widehat{x} \equiv (1,0) ,\widehat{y} \equiv (0,1) , \widehat{r(t)} =r (cos( \omega t)\widehat{x} +sin( \omega t) \widehat{y}), \frac{d}{dt} \widehat{r(t)} =r \omega (-sin( \omega t)\widehat{x} +cos( \omega t) \widehat{y}) \equiv \widehat{v(t)} ,\frac{d^2}{dt^2} \widehat{r(t)} =-r \omega^2 (cos( \omega t)\widehat{x} +sin( \omega t) \widehat{y}) \equiv \widehat{a(t)}