アマチュア無線の書籍と界隈では、これまで長い間、「同軸ケーブルの長さにより、アンテナのVSWRが変化する。」・・・という話が伝説のように続いています。
「SWRメータはアンテナの根元で測定することのが良い」・・・とも言われているし、実際それで適切な測定値が得られるようです。
でも実際には、アンテナは屋外に設置されるため、目視の外になるので、通常は、送信機のすぐそばにSWR計をおいて、アンテナのSWR状態を見る・・・という運用がとられています。
今回、同軸ケーブルの長さによる、(見かけの)VSWR測定値の変化と、インピーダンス、反射係数の関係を計算してみたところ、同軸ケーブル末端の送信機接続部でのインピーダンスと反射係数Γが、同軸ケーブルの長さにより変化していることが、高周波の計算により確認できました。
この結果、同軸ケーブル末端の送信機接続部では、「同軸ケーブルの長さにより、アンテナのVSWR(の実測値が)変化する。」ことが計算により確認できました。同軸ケーブルの長さがながくなるにつれ、伝播に要する時間が遅延し、その分の位相の長さ分、送信機側の同軸ケーブル末端のインピーダンスが変化しています。
この問題を避けるには、短縮率を考慮した半波長の整数倍の同軸ケーブルを用意すれば、位相変化分の測定差分の影響を減らせることも確認されました。
一方、VSWRの計算値は、その元々の定義式から、同軸ケーブルの長さに関係なく一定になりました。
計算による同軸ケーブル長の変化と同軸末端のインピーダンス/VSWR変化の関係
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同軸ケーブルは、その形状から、切ったり、繋いだりの加工が難しく、かつ高価であることから、指定の長さに切って実験で測定することは行われてきていなかった、と推定されます。(切ったり、繋いだりの加工をすると、ケーブル接続部で、特性インピーダンスが乱れることも考えられます。)
なお、この現象から、給電線として、
L=(λ/4)*(2n-1)/√εr[m], { n| n=1,2,3...N; 自然数},εr=2.3(ポリエチレン樹脂の比誘電率)
の長さを使うと、VSWR>2 以上のミスマッチ給電が、送信機端では、VSWR< 1.5
のマッチング状態に見えてしまうことが予想されます。
例えば、3.5MHz 半波長ダイポールが、給電点でVSWR>2でも、給電線がλ/4[m]相当になると、定在波の最小電圧の位置(定在波の節)が送信機端と一致し、大きな定在波が給電線全体にのってしまうと考えられます。
例:W3DZZ型DPで、3.5,7 MHz マルチバンド動作の場合、3.5MHzの送信時にこの問題が出てくるはずです。(R0.3)
参考記事・文献
第十八回 SWR測定、アンテナ直下がベストは本当だった
No.18 Best position for VSWR measurement is feeding point of antenna
https://www.fbnews.jp/202011/trivia/index.html
【第11話】λ/4線路の共振と分布定数回路(その1)
No11 λ/4 feeder's self vibration and the distributed circuit
https://www.fbnews.jp/201909/mrsmith/index.html
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2023/10/01 Rev.0 初版
2023/10/03 Rev.0.1 文章推敲
2023/11/08 Rev.0.2 計算過程説明動画追加、参考文献追加
2023/11/23 Rev.0.3 λ/4長さの給電線に載る定在波輻射発生の課題を追記。