VHF/144MHzで水面反射 超遠距離通信の特集記事

人気の無線専門月刊誌に、湖または池の近くで、水平偏波八木アンテナを数mの低い高さで水面に向けると、通常では伝播しないVHF/144MHzで超遠距離通信ができる、というセンセーショナルな特集記事が記載されたことがある。

この記事内容を読み、その超常現象としての伝播現象に大変驚き、僕は、霞ヶ浦から、このVHF超遠距離伝播通信の再現実験を行った。

結果:
・特集記事にあったVHF/144MHzでの超遠距離伝播通信の現象は再現されず、実験は失敗した。
・水面にアンテナを水平偏波で向けたが、ローカルである東京からすらも、何の電波も受信できなかった。

実験条件:
霞ヶ浦の北、湖岸。
・10エレ、水平偏波八木アンテナ、高さ3m
・実験時刻:夏休み、お昼過 ぎから夕方まで半日(約6~7時間連続受信)
・ケンウッド TS-770

結論:
VHF電波の伝播特性は、水平偏波アンテナが、垂直偏波アンテナよりも、VHFの遠距離通信に向いていることが従来から知られている。
しかし、湖岸から水平偏波アンテナを使い、電波を水面反射させる方法では、超遠距離伝播を起こすことはできない。

VHF/UHF異常伝播(対流圏内ダクト、スポラッディックE層)を起こす特殊な気象現象が発生してい無い限り、記事に書かれたような超遠距離伝播は不可能。

書籍の特集記事にある、水面反射による遠距離伝播の現象は、再現性および信頼性の確かさは何も確認できなかった。

(書籍の記事内容は、事実と異なるもの、虚偽の騙し記事であることが、実際の再現実験で良くわかった。)
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図1. 実験した場所は霞ヶ浦の北岸
(写真のcopyrightはGoogle社殿、GoogleMapより引用)
 
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図2. 実験した場所は霞ヶ浦の北岸近辺の様子
(写真のcopyrightはGoogle社殿、GoogleMapより引用)
 
記事の著者によると、湖の水面を水平偏波で伝播してくる電波が、水平に設置したアンテナに吸い込まれるように集まって来ると、ここで書いた文章を凌駕する、極めて巧みで巧妙な表現で、その驚くべき現象を描写していた。

(書籍記事の文章がエキサイティングな臨場感を演出し、超絶なる巧みな表現で読者を魅了し、僕もまんまと騙され、誤って信じてしまった。
編集部も、著者の巧みな文章を同じように信じ込み、現象の再現性を確認しないまま、騙されて、記事にして出版してしまったのだと思う。)

以前より、田んぼの近くでは電波の飛びが良い、庭に沢山の水をまくと良い、という噂もある。
しかし、水蒸気分布、湿度、温度、周囲の見通しの環境データで、電波の受信電界強度とそれら環境データとの相関関係を、観測された統計データの裏付けで何も検証して無いのに、この噂話が広がっていた。

日本国内の教育では、実験により、理論や仮説を検証するという文化、考え方が定着していない。
最初に結論ありきの思想なので、理論値に実験データを合わせ込むという、言葉が悪くなってしまうが、データ捏造すら起きてしまう。それも生徒、学生時代から。

また、実験データが理論値にあわないと、実験のしなおしが指示される。
この考え方では、理論が間違っていても、理論修正の必要性を見逃してしまう。
 
追記:
中学のとき、富士山と箱根の旅行に行きました。そのとき撮った写真には、湖の水面に逆さになった富士山の像が写っていました。このように光は電磁波の一種とも言われ、水面で反射し、その反射角は高校で「スネルの法則」と誘電率透磁率も習いました。
ここで話がおかしいことに気づくべきでした。
 
一方、電波は、光と物理的特性が変化して、光のように水面で反射するとしてもそれは非常に弱く、金属板や飛行機、電離層やダクトと呼ばれる対流圏内の特殊な条件の空気層では効率よく電波を反射する現象を知っていながらも、専門誌に書かれると、活字やその権威でその記事に騙されやすい、ということがあると思います。