アンテナ素子の長さが計算値より短くなるのはなぜ?

アンテナ素子の長さが計算値より短くなるのはなぜ?

 

物質中の電磁波または光の速度 c(ε, μ) と、誘電率ε、透磁率μの関係は、式(1)となる。

c(ε, μ)=1/√(ε・μ) …(1)

 

ここで、ε_0 = "真空中の誘電率", ε_r = “物質中の比誘電率”,

 μ_0 = "真空中の透磁率",    μ_r  = “物質中の比透磁率” とおくと、

 

μ = μ_r * μ_0 …(2)

ε = ε_r * ε_0   …(3)

 

真空中の電磁波の速度 c(ε_0, μ_0)は、式(4)となる。

 

c(ε_0, μ_0)=1/√(ε_0*μ_0) …(4)

 

物質中の電磁波の速度 c(ε, μ) は、式(5)となる。

c(ε, μ)=1/√(ε_r*ε_0*μ_r*μ_0)

         =1/√(ε_r*μ_r)(ε_0*μ_0)

         =c_0/√(ε_r*μ_r) …(5)  

 

ここで、式(5)では、ε_r ≧1.0 かつ μ_r ≧1.0  …(6) となっている。

 

よって、

c(ε, μ) = c_0/√(ε_r*μ_r) ≦ c_0 …(7)

 

となるので、物質中の電磁波または光の速度 c(ε, μ) は、真空中の電磁波または光の速度 c_0 に対し、1/√(ε_r*μ_r) 倍だけ遅くなることがわかる。

 

光速度不変の原理」は、暗黙のうちに

真空中という条件下でのみ、光速度は一定で不変。」

と、制約条件が説明されてこなかったために、

「アンテナ素子の長さが、計算値より短くなる原因はなぜ?」

その理由が、うまく説明できない理解不十分のまま、今日まで来ていると思う。

 

・現象(a): 

 中学時代に作った21MHz 2素子アンテナの輻射器(アルミパイプ10mmΦ〜12mmΦ)の

   長さが、半波長の計算値( 300/f ÷2 )より短くなる「短縮率」の値が必要になる原因は

   何か?

 

・現象(b): 

 その後作った、「ACビニール被覆銅線」のアンテナ素子の長さが、裸の銅線(Cu)やア

    ルミ線(Al)を使うアンテナ素子( 300/f ÷2 )よりも、さらにに短くなってしまう現象の

   原因は何か?

 

現象(a),(b)について、両者の原因は、

前述の式(7) c(ε,μ) = c_0/√(ε_r*μ_r) ≦ c_0 において、 

 短縮率r を、r≡1/√(ε_r*μ_r) ...(8)  、と定義すると、

 c(ε,μ) =r・c_0 , r≦ 1.0 …(9)

と書ける。

 

式(8)(9)により、現象(a)(b)の原因を説明できることが、大人になってからも長い間、ずっと謎でわからないでいた。

昔から言われているアンテナ素子の短縮率 rの正体は、式(8)(9)により明らかになった。

 

言い換えれば、一般的に、物質中の電磁波の速度は、真空中の電磁波の速度より遅れ、電磁波の1秒あたりに進める距離は、”短縮率” r ≡ 1/√(ε_r*μ_r) 倍だけ短く短縮される。

 

江戸時代末期ごろのマクスウェルさんの理論を理解していれば、このことは100年以上前にわかったことを思うと、僕はずーっと愚かであった。orz

 

現象(a)の物質とは”空気”、現象(b)の物質は”ビニール被覆”で、それぞれの誘電率は、

ε_0(“真空中”) < ε_r(“空気中”)  << ε_r(”ビニール被覆”) の関係にある[1]ので、短縮率はこれに対応して、r_0(“真空中”) < r_air(“空気中”)  << r_pvc(”ビニール被覆”) の関係となる。

 

(ここで、ACビニール被覆導線で半波長ダイポールを調整すると、周波数の同調点で思いの外に短い長さとなり、短縮率が大きくなる原因は、ビニール被覆の誘電率[1]が大きいことdであることが、以上の計算結果により、物理学的に正確に説明できる。)

 

さらに近年は、”誘電率” ε、”透磁率” μは、固定値[1]とは限らず、周波数 f の関数で変化する「複素数値」であることがわかった。(下図参照)

誘電率関数値は、複素数値である。

誘電率関数値には、高い周波数で共振現象が見られる。

参考文献:

[1] 比誘電率を測ってみませんか? 株式会社 Y.E.I.殿

誘電率表 株式会社 Y.E.I. COPYRIGHT(C) 2012 株式会社

(Y.E.I. All Rights Reserved.)

 

課題:

・上の計算では、アンテナ素子の長さが短くなる現象を部分的にしか説明できていない。

電磁波の波長の長さが、真空、空気、ビニール被覆素材で満たされた物質内での長さを計算するモデルになっている。これでは、アンテナ素子の金属素材と形状を含めたモデル化はできていない。

・銅線、アルミ線、鉄線、ステンレス線 でダイポールアンテナを作った場合、空気中で、素子につかう金属の誘電率透磁率の違いにより、それらの素子の長さが、変化するのではないか?

・上記の検討内容は、素子につかう金属の誘電率透磁率の違いにより、それらの素子の長さが、変化について検討できていない。

・鉄線、ステンレス線は、磁石に良く着くので、透磁率が大きいははず。アンテナ素子の素材には磁化ヒステリシス特性等、好ましくない特性があるのではないか?

・鉄やアルミニウムなどの金属は、導体であるため、誘電率の概念が適用できるものではないようだ。高周波は周波数が高くなるほど表面電流が流れる表皮効果は、導体である金属に現れる現象。では、透磁率が全く異なるなるアルミニウム、鉄の、波長 対 同調長さは、どうすれば計算できるかが不明である鉄もアルミニウムも電気を蓄えるための、誘電体ではないので、誘電率の概念は適用できない。金属素材の電線は、分布定数のLCとSパラメータで表現できるのか?

光速/電磁波の速度の式(1),(5)は、誘電率透磁率のパラメータで計算されるが、これらが、周波数の関数で複素数である場合、光速/電磁波cの式も複素数にならざるを得ない。複素数形式による光速/電磁波の速度cの式が不明。かつ、光や電磁波が、その周波数または振動数による共振現象等の物理現象が複素数形式による光速/電磁波の速度cの式で説明できる?かもしれない。

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2022/08/14 初版

2022/08/17  Rev0.1 文章記述の推敲による改訂(内容変更なし)

2022/08/18  Rev.1.0 課題を追記。計算モデリング法の論理ミスを追記。

2022/08/20    Rev.1.1 文章推敲。(内容変更なし)

2022/09/12    Rev.1.2 金属素材は、誘電率の概念が適用できない理由は、金属導体が絶 

      縁体の素材ではないことによる記述を追記。

2023/03/24  光速または電磁波の速度cが、複素数形式の式で書ける可能性について追記。