ヘンテナの製作と実験記録(高校1年生から現在まで)

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MMANA/モーメント法(20世紀末のアンテナ解析法)で判ったヘンテナのアンテナ特性
少年時代、高校一年を終わった春休みに、確か「初歩のラジオ」誌に衝撃的魅力を放つ「ヘンテナ」の記事が紹介されていた。
 
本屋さんでページを開くと、
 
「どうみても3〜5エレ八木アンテナ同等の利得があるのです。
アンテナの形状は縦長の長方形なのに水平偏波
それは変なので、変んだな、ヘンテナという名前がついたという。
 
 
アンテナエレメントは、1/2λが縦に2本と、1/6λが横に3本で、
全長2λ(2波長の長方形ループを2つに分割。
 
 
中央の横エレメントをスライドさせるだけで、エレメント長を変えずに、
(給電点インピーダンス)マッチングが簡単に取れて、SWRが1.5以下に簡単に下がる。エレメントは銅線でも鉄線でも良い。」
・・・とあった。
 
僕はこのアンテナ記事の話に興奮した。
が、おこずかいがなかったので、本(400円+α)は買えずに、自分の頭に記事のアンテナ寸法を覚え、早速自宅に急行し製作にかかった。
 
屋根上に太い(高価な) IV線による50MHz用ヘンテナをでっち上げた。
しかし、SWRは3.0以上でとても高く、送信には到底実用にならない状態だった。
このままでは受信用にしか使えない。
 
IV線の硬いビニル皮膜をカッターで、縦エレメント上に、ビニル被覆を剥いた調整点を5cm間隔でたくさん切った。
 
この作業途中でカッターで指を負傷した。
傷口は深く、大出血。
圧迫包帯法で止血。
しばらくの数日間以上は傷の回復を待った。
 
このSWR=3.0以上は、アンテナとしては全く実用外で、
大変良くない値だったが、無理を承知で送信し、栃木県の近くと交信はできた。
 
送信にも使えるようにすべく、屋根に上り、マッチング作業を再開。
危険な屋根上と、送信機+SWR計のある部屋を、何度も行き来し、マッチングエレメントのスライドを繰り返し、エレメントサイズ:SWR状態の変化と周波数の関係をグラフ化、同調点を懸命に探したが、どうしてもSWRは下がらなかった。[3]
 
高所恐怖症の僕は、屋根上の作業は危険で、屋根から落ちることを恐れた。
 
調整にあまりにも時間がかかりすぎ、高所作業が危険なので、SWRを下げるために、ヘンテナを屋根から一旦おろし、地上でSWRを下げる試みを繰り返した。
しかし、いくらマッチングエレメント(1m)をスライドしてもSWRは下がらず、実用といわれるSWR=1.5は、どうがんばってもできなかった。
本にあった記事内容は再現できなかった。
 
同じころ「初歩のラジオ」誌に、「ケルトン・スロットのラジエータだけを使ってますが、よく飛ぶのでおすすめです。」とあった。
それは、ヘンテナとループ構造が大変良く似ており、こちらは左右対称型をしていた。ケルトンスロットアンテナは、旧ソ連でTVアンテナで使われているという記事(従来方式としての公知例)もあった。
 
これは本質的に同形状、同原理のループアンテナに見え、ヘンテナとの違い、進歩性がどこにあるのだろう?、しかもSWRが下がらない、現実には実用にならない、という目の前に基礎的疑問が起こった。[1]
 
50MHz用ヘンテナ(初作品)のSWRがどうしても下がらないので、製作・調整を一旦中断した。
 
その代わりに50MHz用2エレHB9CVを作った。
こちらはコンパクト形状で、一階の作業部屋で製作と組み立て調整が可能だった。
難なく、そうした苦労はなく、SWR=1.2まで下がった。
2エレHB9CV製作直後、その作業部屋の中で、移動局らしい0エリア(信州地方)と交信できた。
 
その週の日曜日。
早速、自転車で無線機とHB9CVを持って山に登ってCQを出した。
たくさんの人が呼んできてくれて、それはたまげた。
父も山に登りたいと、お寿司を買ってきてくれ、家族で山に登った。
5月のボタン桜の木の下で、家族の写真を撮った。
 

2回目のヘンテナ製作への挑戦。
横の1mのエレメントを、IV線から、12mmφのアルミパイプに交換した。
しかし、またもSWR=3.0あたりで、どうしてもSWR下がらないので作業を中断した。
 
長年ヘンテナができないまま、僕は社会人になっていた。
 
ネット(パソコン通信)でSWRが下がらないことを書くと、
「君のは、構造的にバランがあるか、ないかの差しかない。」と教わった。
 
バラン自体は知っていたが、ヘンテナ用バランは読んだ本の記事では、何かの問題があったからか、作れなかった。(バランは載ってなかった??)[4]
 
ヘンテナのSWRが下がらない現象は原因不明のまま、もっとコンパクトなので扱いやすく、屋根に出ずに、部屋内で調整作業ができ144MHz用ヘンテナに挑戦した。(3回目のヘンテナ)
 
エレメントのサイズは、波長の相似・比例関係を使い計算で出した。
ところが、またもやSWR=3.0近くで、SWRが下がらない現象が再現してしまった。
 
エレメントのIV線被覆ビニルを全部むいて銅線を露出させた。
これは大変な作業で、危険で時間のかかるカッター作業だった。
これで、縦エレメント全領域で、スライド調整ができるようになった。
しかし、いくらスライドしてもSWRが下がらない。
 
別のアンテナの製作記事に、U字型同軸ケーブルバラン製作例があったので、
苦労して作って144MHzヘンテナにつけてみた。
 
おや? SWR=1.5 (実測)になった。
それ以下には下がらないが、SWRは実用範囲になった。
 
窓側ベランダにそのヘンテナを設置。
TS-770でFMメインチャンネルで待機した。
ところが・・・待てど暮らせど、何〜んにも聞こえてこない。
 
しばらくすると屋根上10m 12エレクロス八木に接続したIC-275D(50W免許)から東京の局がCQを出す声が聞こえた。
信号は59+でとても強力。
 
一方、ヘンテナをつないだTS-770には同じメインチャンネルは何も聞こえないのを目の当たりにして、衝撃をうけた。
 
この実験結果をもって、ヘンテナ製作を断念することを決めた。
 
CQ誌」に28MHz 複数素子のヘンテナ形状のアンテナが出た。
「使用感:
よく外国に飛びます。使っているアンテナは「マイ・オリジナルアンテナ」と言っています。」
 
あれ〜、それオリジナルなの? それは、他の人の考えた「ヘンテナ」じゃないのかなぁ。
ディレクタとリフレクタはヘンテナの形状ループで、その給電部にあたる部分はショートしてあった。
あれ〜? それショートしていいのかなぁ?
50オームとか、75オーム終端抵抗でなくていいのかな? 
ただのループではだめなの?
 
・・・長年が経過。
 
インターネットが使えるようになりアンテナシミュレータも出てきた。
ヘンテナはとても良いゲインという話を聞いた。
 
3エレ以上の八木アンテナの最適利得は理論的に計算できない、と聞いていた僕には、この時は、アンテナ・シミュレータをとても信じる気にはなれなかった。
(八木宇田アンテナは、その理論では4エレ以上の最適値が求まっていなかった。)
 
ネット検索すると別の形の「ヘンテナ」というのがでてきた。
「ヘンテナの本当の発明者は私です。」と書いてあった。
どうして、何人も発明者がいるのかなぁ?
 
そのうち、ネット掲示板「ヘンテナの横エレメントサイズは90cmにすると良い。」
というOMさん情報があった。
 
(ヘンテナは、50MHz用では、この横エレメント長が1mではなく90cmという発見により、初めてSWRが下がる方法が知られたことにより完成したもので、それまでのヘンテナは高いSWRで送信アンテナとしては未完成だった、と解釈することもできるのかな?)

 
給電エレメントをずらすことで、同調周波数やインピーダンスがどのように変化するのか、現在でも明確に解析できていない・・・ という課題が残っていたような・・・?
: 僕のほうで解析しました。(別ブログに開示済))
 
この説だと、記事に指定されていたアンテナ寸法は、全長で30cmもの大きな誤差になる。
SWRが下がらなかった原因は、エレメント寸法が長すぎて、周波数の離調が原因で、バランじゃなく、これが本当の原因なのかな? 
 
モーメント法によるMMANAシミュレータでヘンテナを選ぶと、SWRの計算値がやはり高い。
自動で最適化計算したが結果が思うようでない。
やはりSWRが下がらない現象がMMANAの計算でも再現してしまった。
 
そこでためしに、そのOMさんの説、横エレメント=90cmと仮定し、手動入力で横エレメントを90cmと入力した。
 
おや? ・・・・MMANAで、SWRが下がった。
さらに最適化の操作をしたら 75オーム給電線で、50.2MHz SWR=1.0になった。
ゲインは、10m高さ 銅線で、実効利得 約10dBd.
自分が入力した2エレ八木とほぼ同等の利得値が得られた。
 
次にHB9CV 2エレ八木をMMANAで計算した。
・・・おやっ?・・・おかしい。
 
HB9CVは位相ずれ給電法で、2エレでも3エレ八木に匹敵する利得説明のはず。
なのに、2エレ八木に利得で負けてしまっている
あの理論はこんなにも長年間、間違いだった・・・・orz ということなの?
(これ新発見かも?!)
 
次にMMANAで14MHzデルタループを最適化した。
SWRは2〜3.
アンテナチューナでごまかすか・・・。
実測結果はMMANAシミュレータの計算値と一致していた。
 
14MHz 100W 電信で早速アフリカまで飛んだ。[※2]
でもSASE+Green Stampを送ったがQSLは来なかった。
もったいないのでQSLカードにお金を使うのはやめることにし、交信記録は録音することにした。
 
その後、たまたま買ったCQ誌に、ヘンテナの件で、いろいろと意見が書かれてあるのを知った。
何と次の号にはその反論まで載ったらしい。
これは何ごとなのだろう??・・・と何があったのか、わからなかった。
 
[*1]スライドしてマッチングが取れるという手段は、調整作業での進歩性が見られますが、ヘンテナの電気的特性は、Qが高くなるため、送信可能な周波数帯域が狭くなり、同調がかなり高精度で微妙な調整が必要となるデメリットも伴う特性もあることが、1990年代のモーメント法
(米国で発表されていますが、日本ではよく知られていません。)
等の新しい電磁気学を基礎とするアンテナ性能計算理論で、初めてわかってきました。
 
[※2]14MHz運用には、第二級アマチュア無線技士以上の無線従事者免許と、無線局免許が必要です。
 
[3]バランが無いSWRが高めのアンテナでは、給電点と同軸ケーブルの接続部近辺で、アンテナ動作部分と給電線の分離が明確でないため、同軸ケーブルがアンテナの一部として動作するような電気的特性があるのかもしれません。
同軸ケーブルの長さでSWR値が変化する現象が知られています。
 
[4]シュペルトップ・バランと呼ばれる約1/4波長のバズーカと言われる構造のものが、ネット検索で見られます。
このバズーカと呼ばれる外皮導体の構造は、アンテナ給電点からみたバラン側バズーカのインピーダンスが無限大になり、同軸ケーブルとヘンテナの結合を極小に疎結合にする工夫が見られました。
LCマッチング回路としての、集中定数マッチング効果との解析結果は現在まで不明、今後の課題と思われます。