144-146MHz用グランド・プレーン(GP), SWR=2から下がらない現象の検討

引用記事: インピーダンス整合計算結果が式と合わない問題をもつ記事[5]

RF World誌BBSに、グランド・プレーンアンテナのSWRをマッチングさせるオフセット給電位置を計算する記事[5]で、

(1)記載された計算式と、その計算値が合わない問題

(理解無しの式の引用+計算ミスによる計算:論外のミス)

(2)記載された記事に、オフセット給電部位置 d の計算式導出が記載されていない問題

の指摘がされていた。

この問題(2)に関し、僕はかつて覚えていないずっと前に、同じように、144-146MHz用グランド・プレーン(GP)アンテナを製作し、SWR=2から下がらない現象に遭遇した。

試行錯誤の結果どうにもSWRが下がらないので、この形状の144-146MHz用グランド・プレーン(GP)アンテナは実用にならない、という結果を得ていた。

 

給電部オフセット位置の計算方法:dの計算式導出の試算

給電部オフセット位置の計算方法 (dの計算式導出方法の説明)

参考文献[1]から、オフセット給電部の寸法 d は、上図のようにアンテナがλ/4波長の輻射部根本で、RF電流の波の定在波の腹を形成し、Z=21+j1.3[Ω]となり、同軸給電線の特性インピーダンス50[Ω]と整合できないため、オフセット給電によりこの問題が解決できるとされている。

この1955年(昭和30年)の文献では、19世紀末のマクスウェル方程式は使われず現在の高校教育「物理基礎」で扱う「閉管/開管 気柱の振動」について、「開管補正」が考慮されていない近似的な計算モデルが使用されていることがわかった。

 

垂直のλ/4波長の長さの輻射器に、90度の角度で、ラジアル線を4本、または、2本構成する場合、給電部のインピーダンスZは、文献[1]の記述通り、高周波抵抗成分R=21[Ω]が低すぎる値のため、SWRが2程度と、特に送信時の実用性に問題がある

問題解決の公知例:

この問題は、その後、「逆V型ダイポール」、製品「アローライン・アンテナ」、「バンザイ型ダイポール」で解決され、SWR=1.0の整合が実現されている。

参照文献によるオフセット給電のマッチング法は、モーメント法、FTDT法の無かった非常に古い時代の概算と実験による記事で、現代では困難が伴うレベルである。

 

(以下、実用には困難が伴うことの計算確認です。)

スミスチャート上でインピーダンス計算(集中定数+分布定数)ツールでの計算結果

現在のスミスチャート上でインピーダンス計算(集中定数+分布定数)ツールでも、SWRが約2で、実用は困難であることが計算で確認できた。

パラメータ設定

 

GPアンテナ計算モデルの設定: 同軸ケーブル10mの接続を仮定

計算結果:SWR ≧2

緑色の円はSWR=2 を意味する。黒い線の軌跡は、周波数を144MHzから146MHzまで変化させた時のデータポイント(DP)の各点が移動することを意味する。

赤色の線は、144MHz〜146MHz帯域での同軸ケーブル末端のインピーダンス値の軌跡。

このように、同軸ケーブル末端でSWRが2より下がらない実験結果は、同計算でも再現した。

 

計算結果: S11 の値

S11の計算値は、周波数帯域内で微小な振動があるが、ほとんど一定である。

この計算値の意味は現在不明。調査中。--> X印が右端のインピーダンス測定点、X印からVminが定在波電圧最小位置0.162λ[m], X印からVmaxが定在波電圧最大位置0.412λ[m]という意味です。

計算結果 各data pointでのインピーダンス値 (複素数表現)

Data Point (DP) 2 で、Z=51.8-j45.6[Ω]で、マッチング状態が良くない。(SWR2以上)

虚数部が大きすぎ,145MHzから離調している。

 

以上のように、計算結果は「実験でSWRが2以下に下がらない現象」を再現している可能性が高い。

 

参考文献(引用):

[1]参考文献 その1

[2]参考文献 その2

[3]参考文献 その3

[4]参考文献 その4

[5]RF World誌BBS:グランド・プレーンアンテナのSWRをマッチングさせるオフセット給電位置を計算する記事

 

2023/07/05  初版 Rev.0.0

2023/07/07 Rev1.0 論理ミス修正。同軸ケーブル末端で終端抵抗50Ωを除去した。

修正の理由:アンテナ末端のインピーダンス値は、終端抵抗を接続すると、誤った回路となり、正しいインピーダンス値が求まらない問題を修正。

2023/11/12 Rev1.1 定在波状態の説明を追記。

2024/3/3 文書推敲。モーメント法考案前の時代のアンテナ記事は、適切なる信頼性が確認できない計算結果となった。