広帯域バランの定性的動作の新しい考え方(仮説,暫定版)

広帯域バランの定性的動作の新しい考え方(仮説)

                                                                                                                           2022/12/23

広帯域バランの基本構成と高周波磁力線キャンセルの仕組み

 

(1)使用するコイルのコアは、磁力の切れの良いヒステリシス特性が弱い・磁力の残りにくい素材が良く、理想的には空芯コイルで成り立つところの B=μH の特性に近い磁力が飽和しない特性が好ましい。(銅パイプなら, 比透磁率 ≒1.0 となる。)

(2)鉄心には、右側コイルL[R], 左側コイルL[L]には、基本的には、相互的な(互いに逆位相の)作動電流が流れ、時間的に大きさが三角関数 I(t)=I0sinωt で変化し、押し電流 I[push], 引き電流 I[pull]は、概ね大きさが同じで、電流の方向が逆で,発生する磁力線同士を打ち消し合う。(何故ならば、右ねじの法則に従って、双方逆位相の電流が、発生した磁力線を打ち消すため。)

(3)このため、時間的に動的なバランのインダクタンス L[R], L[L]は、結局、等価的に 0[H] に近くなる。(何故ならば、時間的変化に対し、コア内の磁界ベクトルB=0 一定になるので、等価的にインダクタンス=0 になる。)

(4)その結果、周波数 f [Hz]の変化に対して、ほぼ平坦なインダクタンス値 jωL[R]=jωL[L] ≒0  として動作する。

(5)同軸ケーブルの電気的特性としてよく言われる「不平衡」特性は、言葉による説明がうまくされてこなかったように読める[1]。既存の、または従来の説明では、芯線が、微小のR,L,C成分の 回路で、特性インピーダンスZ≒√(L/C)の伝送路が、理想的な電圧0V, Z=0 の完全に平坦な電圧のグランド電線が無限に長くある、という仮定をおいてきた。しかし現実には、外部導体の被覆線であるグランド電線は、表皮効果、(ファラデー)シールド効果のあるR,L,Cの分布定数回路とモデル化して考えないと、電線周囲に現れる電界と磁界の存在(変位電流または俗称コモンモード電流)を説明できていない。

また不運にも、変位電流またはコモンモード電流の理論式の導出がなく、測定波形データもない、実験による検証という考え方もない、という科学的立証法に関わる、未解決の学問上の課題がある。

(6)中間に位置するコイルL[M]は、その巻線が、片方が右側のコイル L[R], 片方が左側のコイルL[L]の巻線が密着するように、それぞれのコイルに、相互に逆方向の電磁誘導電流が発生して流れるために、相互の誘導電流が打ち消しあった合成電流Imはほぼ0[A]となる。 つまり、Im = IR-IL =ΔI ≒0 となる。 

(7)現在までの説明例では、磁気コアには3つのコイルのそれぞれに同一の磁力線が現れ、磁界Bベクトルが発生する、とされてきたが、上記の考察からは、同磁界ベクトルは B=0となり、磁力線の打ち消し合いにより、コアに磁界はほとんど発生しない、と考えられる。

(8) #(6)に書いたように、中間のコイルL[M]には、コアの磁界B=0となるような調整された巻数のコイルを巻くことで、同軸ケーブルの芯線と外被導体間に流れる高周波電流のアンバランス(不平衡)状態をほとんど消去できると考えられる。

(9)上記の考え方が正しいならば、上図に書いたダイオードの両波整流回路の電流計は0A になるはずである

(ただし、アンテナのインピーダンスが Z=R+jX, X=ωL-1/(ωc)で、リアクタンス成分Xが周波数同調点で打ち消され、順抵抗成分 Z=Rとなることが条件。)

アンテナの周波数の同調がずれた高周波電圧が加わる、より一般の条件の場合は、リアクタンス成分Xに対応する位相ズレのある電流が、バランの左右それぞれのコイルに流れる

中央のコイルL[M]には、電磁誘導により、左右のコイル(L[L],L[R])のどちらからも、それらの電流変化を打ち消すように電磁誘導電流が流れることが予想される

・・・これがバランのバランスをとるという本質的な電気的特性を意味すると考えられる。)

(10)フェライト・コア内に発生する高周波抵抗成分については、理論的計算方法が現在まで開示されてなく、事実上知られていない。実測データの一部のみを知ることはできる。

(11)もし、高周波抵抗成分が、フェライト・コアに発生しているならば、疑似アンテナとして通称ダミーロードと呼ばれる抵抗器を接続すると、入力されるRF電源より低い電圧が測定されるはずであるが、現在は知られておらず、SWR≒1.0 の測定データ[2,3]のみ開示されてきた。[2]

すなわちRF電力の高周波抵抗による損失、熱の発生の定量的解析法と測定値は、現在は知られていない。(今後の課題)

 

2. バランのバランス効果のsimulation計算例

「RF World誌」で習った2相式トランスによるバランのバランス効果について計算し、動画を作成しました。

微小のコイル1uH:1uF2相式トランスをアンテナの根本につけると、アンテナ負荷のバランスが大きく崩れていても、周波数が高くなるほど、給電線と高周波電源側に流れる高周波電流の位相が高い効果によって、電流の位相があってくる効果を確認しました。

 

広帯域バランの動作原理の計算実験: 高周波送信波のバランス特性計算の一例 - YouTube

www.youtube.com

参考文献:

[1] 広帯域バランの説明文献(見本) CQ出版社殿

[2] JARL 和歌山県支部殿主催 バラン組立説明書 アンテナ講習会用資料 Ver.4 製作時注意点付記版

[3]メーカ製広帯域バラン説明書[ここでは非開示とします。]